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May 17, 2008

奥武則『論壇の戦後史 1945-1970』(平凡社新書)

Imgp7188このタイトルに興味をひく人なんてどれだけいるんだろうか。そう思わざるをえない素っ気ないタイトル。わたしよりも2まわりないし3まわりくらい年配の読者ならあるいは寄りつくかもしれないが。そういう意味では成功なのかな。

筆者はもと毎日新聞の学芸部長にして現在は法政大学社会学部教授。新聞記者らしく、さまざまな立場が入り交じっていた戦後論壇の思想状況を分かりやすく解説し、見取り図をを描いている。わたしが少しだけかじっていた日本の戦後思想(この用語じたいすでに死語だけど)は、1960年代あたりで途絶えてしまったので、その後を学べたという意味でもありがたい。戦後の「悔恨共同体」から60年安保までの流れなんて、すでに忘れかけていた人びとの名前がでてきたから、実に懐かしく、新鮮だった。

でも、個人的な偏見を言わせてもらうならば、新聞記者の書くものというのは、どこか煮え切らない、そんな印象がどうもぬぐいきれない。自分の意見表明からどこか逃げている。他者の意見をして自己の主張を滑り込ませる。おまえの立場は何なんだと詰問したくなるが、昔習っていた大学先生の言葉を借りれば「ひと言で言い切れるできるほど物事は単純ではない」ということなんだろうけど。とはいうものの、わたし自身、自分の立場を公私で明らかになんかできないし。末端とはいえメディアに関わる仕事をしている身としては、自分の言いたいことをはっきり言うことがどんなに難しいことか、くらいはわかるつもり。

そんなわけで、文系の大学生にはとりあえず読んでおけば社会思想史や政治思想史などの一般教養のレポートで苦労することはない本だと思う。それにしても新書は最近やたらたくさん出ているのに、哲学・思想系はほんとうに少ないのはちょっと寂しい。

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