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April 10, 2010

角川one21新書『情報病』三浦展・原田曜平

Sickofinformation「アクロス」元編集長の三浦氏と、私と同い年の社会学者原田氏との対談。本編ではこれにいわゆる“草食系”の現役学生「草男」くんと、「鉄子」さんが加わる。

三浦氏の『下流社会』(光文社文庫)の書評は5年ちかく前(もうそんなに経ったのか!)に書いたが、本書を読んで、その観察眼には改めて感服。

展開としては、草男君の恋愛観・消費観をダシに、三浦氏と原田氏が分析を加えていくというもの。両者とも自身の若者時代経験を重ねつつも、現代の若者のマインドセットを読み解いている。半分若者気分の自分としては、妙に若者の気持ちに同調できるところも一部にある一方で、50過ぎの三浦氏の意見にも納得できる部分もあったり。いくつか気になった部分を引用。長いですがご容赦を。

三浦 昔は草食の男性をムチでたたいて肉食にしていただけだと思うんですよ。…結婚したから、子どもができたから、もっと働けとか。好きな仕事は二割しかするなとか。そういうことをいう上司がいるから結婚も子供をつくるのも嫌になる若者が増えて少子化したんだと思うよ。(74ページ)

原田 進化の過程を知っている、って重要だよね。昔の方が良かったとか、今は本当に便利になったとか。懐かしみにしてもありがたさにしても感じるもんね。
三浦 すべてのモノの進化の過程を知っていて、そこで選べるのが豊かさじゃない?(105ページ)

原田 ラカンの言う「汝の欲望を諦めるな」ですよね、まさに。他人の欲望が情報として入ってきすぎちゃうから、結果、自分の欲望が育たない。(124ページ)

原田 私はお茶に凝っているとか、人とちょっと違うものとか難しい本をとにかく私は好きだから読むとかって奴もいなくなるか、少なくなるだろうね。
草男 いるんですけど、あんまり言わない。…僕そういうのにメッチャはまってて本当はこうだよとか言ったらKYなんですよ。…だからそういう詳しい奴も空気読んで、一般レベルに合わせるんですよ。(140ページ)


若者一般のコミュニケーションスキルは低下しているのではなく、むしろ求められる基準が上昇している、だから低いスキルの持ち主が「空気が読めない奴」と言われる危険にさらされるのであろう。…だから、たしかに、景気が悪く、バイトも少ない、お金がないから若者は消費しないのだという経済学的な解釈も間違いではないが、それだけではないのだ。現代の若者は、物を消費するのではなく、人間関係の消費に時間とお金を費やしている。しかもその人間関係が情報化されて増幅している。増幅した人間関係を維持するために必要以上に時間とお金の負担がかかるのだ。周りの人間の空気を読みすぎて大胆な消費をしない面もある。いわば「空気」を消費しているのである。空気を消費しているのだから、消費が見えないのは当然であろう。(「あとがき」236ページ)

いまの若者たちの振る舞いは、三浦・原田両氏から見ればタイトルを見るように「病理」なのだろう。こういうラベリングからして超一流大学出身のエリートという出自を持つ両者の“上から目線”がじゃっかん気になった。

あるいは、正確に言えば情報“病”というよりは情報“依存症”なのだろうと思う。抜け出したくても抜け出せないあたりはまさに“依存症”だ。でも、数年はきっとこれが当たり前のものとして意識されていると思う。時代の流れを押しとどめることはできない。

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