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July 27, 2010

小谷野敦『日本文化論のインチキ』幻冬舎新書

Imgp08551各方面で話題の文芸評論家(比較文学者)による撫で斬り批判書。表題からして、これまでの日本文化論に対する批判の書として(自分も含めて)いわゆる左翼陣営が喜びそうな主張のように思えるが、隠れテーマは「グランドセオリー批判」「一次ソース至上主義」の文章と言える。

ここで、筆者の小谷野が最も嫌うことは何か。「私が言いたいのは、歴史に法則性を見つけようとすることが間違いだということなのである」(54)。あるいは、「文学作品を「例」として持ち出すのは構わないのだが、あたかもそれで論証をするような形になると学問を逸脱する」(65)。個別特殊な事象をもとに、一般普遍的な理論を打ち立てようとする姿勢に疑義を呈する。「非科学的」「非学問的」という言辞が至る所に飛び交うが、筆者は、歴史的事象に対して“法則性”や“理論”を打ち立てることの無意味さをひたすら繰り返している。

膨大な読書量に裏うちされた筆者の博学ぶりは十分理解できるのだが、その鋭い舌鋒が勢い余って批判する対象への人格非難を多分に含んでいる(というか読む者にそう感じさせてしまう)ことが、本書の“学問性”を薄めてしまっているように感じられた。「赤川学、山田昌弘といった社会学者は、当初から私の言うことを良く理解し自論を展開しており…」(170)といったような上から目線な表現がまた不遜な印象を与えてしまっている。

『もてない男』(ちくま新書:1999)を読んだときの「面白いことを書く人だなあ」という印象は変わらないが、本書は「もてない男」にはあった“内向きのベクトル”というか自虐性は失われて、やたらと外へと向かって攻撃的になっている。外へ向かうほどアカデミズムの世界からは無視され、そのことがまた小谷野を刺激してその先鋭性を増進する、というようなスパイラルを生んでしまっているような気がしてならない。

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