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January 17, 2011

三浦展・上野千鶴子『消費社会から格差社会へ [1980年代からの変容]』ちくま文庫

Imgp87112007年に河出書房新社から出された単行本が文庫化されて2010年9月に刊行された対談本。自分が学生時代の時は、構築主義で鳴らす気鋭のアカデミシャンという印象ばかりが先行していた上野だが、この本を読んで実はマーケティング畑が出自だと言うことを初めて知った。

一方の三浦は、ベストセラー『下流社会』を著したジャーナリスト(と便宜的に紹介しておく)。パルコのマーケティング誌『アクロス』の編集担当を長年勤めた。

本書はいわゆる団塊世代、団塊ジュニア、そしてポスト段階ジュニアを中心とした一種の世代論で、データ的な信憑性はともかくとして、感覚としてはじつに的確な分析をしている。

「いまの20代、30代は、子どもの頃はバブル時代で、非常に豊かな社会で何不自由なく暮らしていて、自分はずっと中流のつもりだったんですね。ところが大学を出ると就職難の時代に当たってしまった。で、やっとこさ会社に入っても給料は上がらす、むしろ下がったりする不況に直面してしまう。自分が中流から落ちこぼれそうだという危機感に襲われ始めたんですね。そういう危機感を持った30代が相当増えてしまったという現実ですね」(三浦:17ページ)

「(子供を作る場合は)男にシングルインカム(片稼ぎ)でも、妻子を養っていけるだけの家族級を保証することが条件。ただし、今の日本の企業には家族給を維持するだけの余力がなくなってきています。そうなると家族を持つ余裕のある層と余裕のない層が出てくる。家族はもはや贅沢品だからメンテナンス・コストに余裕のある層しか家族をもてないでしょう」(上野:67ページ)

もはや家族は共同体を維持する手段と言うよりも、上野が述べるような贅沢品・嗜好品になりつつあるのではないか。共働きで生計を維持できるならともかく、就業先が限られるいまの状況では、女性の働き口を求めるのは非常に厳しい。

かくいう自分も家族を持ったが、できてしまえば経済的な事情は二の次で素直に愛おしいと感じるもの。問題は、上野の述べる理由で家族を創ること、出産はおろか結婚自体が忌避されてしまうことだ。そう考えると、閉塞しきっているいまの日本の将来は楽観できない。

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