My Favorite Discs 2011(いまさらながら2011年お気に入り10枚)
すでに年が明けてから3か月が経ってしまいましたが、2011年に入手した音源のベスト10作品を挙げました。有名・無名さまざまですが、これまでに劣らずいろんな発見があった2011年。傾向としてはとくに洋楽で80年代リバイバルが顕著。邦楽は90年代生まれのポテンシャルを痛感した1年でした。2012年はどんな音楽に出会えるか、楽しみでなりません。
●Jonsi "go"(2010)
もはやBjorkと双璧をなすアイスランドの至宝。Sigur Rosのようなストリングス主体のオーガニックな曲はもちろん、エレクトリックでヒンヤリとしたアップテンポな曲調、あるいはピアノ弾き語りの叙情的な音とも最高の相性。歌い手としての引き出しの多さには舌を巻く。アイスランド語ではなく英語主体でキャッチーなのもいい。
●ねごと "カロン"(2011)
前作の「Hello! "Z"」も素晴らしい作品だったけれど、完成度では本作はそれの上をいく。1曲目の表題曲のイントロからしてドキッとさせられる響き。詞の内容は青臭くないのに深く切なく絶妙の線をついてくる。キーボード/シンセ主体の音作りとギターの音色が80年代テイストをそこはなく感じさせるあたり、70年代生まれにはない感覚なのかも。ハタチそこそことは思えないバンドの一体感に、間の置き方と、クライマックスへの持って行き方。そのサウンドクオリティには驚くばかり。
●El Ten Eleven "Daytrotter Studio"(2011)
米国のインストバンドであるけれど、いわゆる南部系ジャムバンドのような土っぽさはなく、かといってテクノ系のトライバルな感じでもない。流星のようにきらきら輝くキレ味のいいギターと弾けるドラム、ミッドテンポなベースに同じループを何度も続けながら少しずつ変化を付けていくあたり、方法論そのものは電子音楽に近い。とはいいつつもあくまでもロックバンドのダイナミズムは残されていて、楽曲それぞれにメリハリがあるから聞き飽きることがない。"Living On Credit Blues"とそれに続く"Indian Winter"はタイトルともどもすばらしい名曲。
●Four Tet "There Is Love In You"(2010)
いわゆる“フォークトロニカ”とカテゴライズされているけれど、聞いてみるとテクノ色がかなり強い印象。バキバキなものではなく、音数も少なくどことなくスカスカでもあるんだけれど、軽めのキックと粘るベース、そしてラテンのエッセンスがみごとに調和して妙にフィジカルなサウンドに仕上がっている。聴き疲れしないクリーンなサウンドと思いきや、意外とディテールは凝っているという、全てが計算され尽くした絶妙なバランスの上に成り立っていると感じさせるあたりがすごい。レッド・マーキーのフロア全体を揺らしまくったフジのライヴはとにかく圧巻だった。
●Perfume "JPN"(2011)
「Game」も「⊿」もたしかに名盤だとは思うけれど、自分的には彼女らの最高傑作はこの作品だと断言する。とにもかくにもアルバム全体の統一感が素晴らしく、イントロを聴いた瞬間から最後まで聞き込ませるだけの吸引力がある。白眉はやはり「レーザービーム」と「GLITTER」。全体的に落ち着くべき所と盛り上がるべき所のメリハリがあり、アルバム自体もコンパクトにまとまっているのが好印象。と書いて気づいたことだが、55分もあることに今さらながら気がついた次第。正直、30分くらいに感じていた。ここまで強力な時間圧縮効果を持つ作品も珍しい。
●BATTLES "Gloss Drop"(2011)
超傑作"Mirrored"に続く作品、しかもサウンド面での中核を担っていたメンバー(タイヨンダイ)脱退後とあって、その出来が心配された本作。そんな不安をよそにリリースされた本作だけど、その切れ味はまったく衰えてはいなかった。たしかに、"Atlas"のように万人受けるするキャッチーさポップさ、アゲアゲ感は失われたものの、楽曲構成の緻密さと深みは前作を凌ぎ、ロックのカテゴリーで括るにはあまりにもスケールが大きく荘厳。本作のジャケットやシングルカットされた"Ice Cream"のPV、そしてライヴなどを見ると思うことだが、このバンドは以前からある種のグロテスクさというかおどろおどろしさを内に秘めていた。サウンドの種類は全然違うけど、この点ではVelvet Undergroundの"White Light/White Heat"に似ているといったら褒めすぎだろうか?
●RA RA RIOT "The Orchard"(2010)
「ニューヨーク出身」という肩書きにありがちな東海岸的前衛サウンドではなくストリングスも電子音も巧みに使いこなしながらポップで美しいメロディを奏でる男女5人組。80年代の香り漂うキャッチーな“美メロ”が特徴のバンドではあるけれど、パワフルなベースとドラムのリズム隊がしっかりボトムを支えているので、軽薄な感じがしない。フジでのライヴパフォーマンスも想像以上にパワフルでよかった。"Too Dramatic"と"Massachusetts"が白眉だけれど、アルバム全体の流れも素晴らしい。いまから次回作&再来日が楽しみなバンド。
●M.F.S.B. "The Love Is The Message: The Best Of Mfsb"(1995)
TOKYO FM出版の「ALL ABOUT DISCO MUSIC」の紹介文で、「フィラデルフィア・ソウルの金字塔」という文言に惹かれて買った本作。ディスコ色が強いのかと思いきや、想像以上にオーセンティックで、ロック〜テクノに聞き慣れた耳にはじゃっかん古くさく感じるかも。とはいえ、ほとんどはいちどは耳にしたことのある曲ばかりで、ジャズとソウルの幸せな出会いを目の当たりにすることができるはず。"Something For Nothing"は3分足らずの小品ながらドラマチックな展開には感動すらおぼえる。
●M83 "Saturdays = Youth"(2008)
いわゆるマッドチェスター〜シューゲイザーフォロワーで、Dykehouseなどと並んでニュー・オーダーからマイブラ、ストーンローゼスあたりの影響をもろに感じさせるバンド。耽美に響く、いかにも欧州的なピアノとシンセサイザーのイントロからして印象的。心音のように響くドラムとリバーブを聞かせたギターが心地良い"Graveyard Girl"が最高。ライブだけでなくフロアでの盛り上がりようも考えた構成はやっぱり2010年代を見据えた音。ジャケットもすばらしい。
●二階堂和美 "にじみ"(2011)
冒頭から昭和歌謡を前面に打ち出した二階堂節が全開。彼女にとっては、ポップな前作「二階堂和美のアルバム」が異端な存在であったわけで、本来の居場所にもどったということなんだろう。とはいいつつも、本作のクライマックスは(昭和歌謡ではなく)ラテンの響きをもつ異色の作品"お別れの時"。これ以上ないほどに陽気なメロディなのに(PVも妙に明るい)、詞がとてつもなく悲しげというのはどういうことだ。レイ・ハラカミの逝去と重なったこともあって、図らずも2011年のレクイエム的作品となってしまった。
●過去の10ベスト
・2010年
・2009年
・2008年
・2007年
・2006年
・2005年
・2004年
・2003年
・(特別企画)クリスマス特集
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