(1年遅れの)My Favorite Discs 2013
2015年も明けてしまいましたが、ほぼ1年遅れの2013年の10ベスト(+1)を書きました。2014年の年初に半分くらいまで手を付けていて放置していたのを改めて聴き直して再構成。比較的新しい作品が多いのは、Last.fmやShazamとかで発掘する機会が増えたこととも無縁でないかもしれません。2014年版も時間があれば近々書きます。
1から10まではどれが気に入ったというのはなく順不同。11は次点という扱いです。
1. James Blake / Overgrown(2013)
たぶん、「ダブステップの新星」といったレッテルから判断して、音源だけを聞いていてもジェイムズ・ブレイクの真価は理解できないと思う。バカ売れした前作を受けてドロップした本作はシンガーソングライターとしての本領を遺憾なく発揮。バックトラックと執拗低音は20年くらい前に流行ったPortisheadやトリッキーあたりのトリップホップを思わせるけれど、ああいう不穏さはなくてひたすらに内省的。最近はフロアをあえて避けるような曲ばかり出すけど、いざライブになればひたすら弾けまくってくれるあたりが憎めない。
2. Perfume / LEVEL3(2013)
もう鉄板。EDM色強めた5作目。前作は歌モノ志向だったので、今後はそちらの方に行くのかとおもっていたら、初っぱなからキレッキレ。でも、西海岸EDMほどせわしなくない。アクの強い粘着ダブステップなイントロからキャッチーなボーカルセクションが入る「Spring of Life」、もろEDMな「Party Maker」、言葉遊びもたのしい「だいじょばない」、アラビア音階調(?)な「Sleeping Beauty」といった遊び心もあってビジュアル無しでもぜんぜん飽きない。
3. Machinedrum / Vapor City(2013)
真っ暗なフロアでひたすらEQの低音域を引き上げて爆音で流したい種類の音楽。のっけの「Gunshotta」からして深いリバーブで安心させておいて怒濤のブレイクビーツで圧倒してくるからのけぞった。音を起きているだけでも、タイトル通りどことなく霧に巻かれているような湿っぽさが伝わってくるあたりが不思議。この低音を全身で感じ取る機会があれば、もう虜。
4. Squarepusher / Ufabulum(2012)
出来不出来はあるけれど、コンスタントに作品を出し続けてくれるあたりが信頼できるスクエアプッシャー。今作は久しぶりにアゲまくってる、だけでなくてキャッチーさもあって聞きやすいアルバムに仕上がった。Aphex Twinのようにエキセントリックな方向に行きすぎないけれど、どこか教会音楽のような荘厳さと調和のなかに狂気をはらませている点がこの人ならでは。繊細なメロから入ってV8フェラーリの空ぶかしのような怒濤の電子音でおしまくる「Dark Steering」は映像ともども必見。
5. LAMA / Modanica(2012)
ほぼスーパーカー。「Highvision」の後継的作品。ナカコーにフルカワミキ、田渕ひさ子とAgraphの牛尾憲輔。1作目の出来が正直いまひとつだったので心配だったけど、2作目で皮がむけた。弱めのキックとスペーシーな浮遊感の電子音に絡むギターサウンドが心地よい。後発のサカナクションあたりと際だってちがうのは、頂点までアゲきらずにどこか抑制的なところ。2曲目の「White Out」とかシングルカットされた「Parallel Sign」とかが典型的。
6. Sister Crayon / Bellow(2011)
「Souls of Gold」でブレイクしたサクラメントの4人組。カーディガンズやクラウドベリー・ジャムの北欧ポップが好きだった人なら間違いなく入れ込めるはず。気怠げな女性ヴォーカルとストリングス、ライトなギターサウンドの3点セットでおしゃれ路線かと思いきや、音響派の要素も含めた楽曲はかなり凝っていて、表現豊かなテラ・ロペスのヴォーカル共々しっとりと聞かせる実力派。ライブ見たい!
7. Of Monsters and Men / My Head Is an Animal(2013)
アイルランドの5人組。ケルティックフォークの要素というと以前はポーグスやドロップキック・マーフィーズ、最近ではスキニー・リスターあたりが流行っているけど、こちらはロックの要素は控えめでアーケード・ファイアあたりにも通じる土着感がある。女性ヴォーカルはケイト・ナッシュやリリー・アレンを思い起こさせる美声で、愛くるしい男性ヴォーカルとの絡みも美しい。2曲目の「King and Lionheart」からアンセム「Mountain Sound」へのつなぎが特にしびれる。2013年のフジでは土砂降りのでかすむホワイトステージの演奏が見事にはまっていて感動的ですらあった。
8. Porter Robinson / Spitfire(2011)
1992年生まれのEDM界の新星。これもフジのレッド・マーキーで見たアーティストだけど、スクリレックスのように聞き手に息をつかせてくれないひたすら突き上げまくり絶対フロア志向EDMではなく、こちらは入りで抑えつつも肝心どころでガツンと盛り上げるタイプ。2曲目の「Unizon」やヴォーカルをフィーチャーした4曲「Vandalism」あたりが無理してない感があって好印象。
9. The xx / xx(2009)
シガー・ロスあたりに通じる音響系ポストロックユニット。1曲目のイントロ5秒を聞いた瞬間に名盤であることを確信させる出来。1曲1曲はコンパクトで、生音主体のシンプルな楽器構成にヴォーカルをきっちり聞かせるあたりがありそうでなかった組み合わせで逆に新鮮。フジでは3日目ホワイトのトリ。前々日のスクリレックス、前日のジュラシック5とはまるで正反対の“静”のステージだったけど、生で見て・聞いてみると、単に繊細で美しい音を奏でるだけの名ばかりの音響系アーティストでないことが分かるはず。ギター音色響き渡る唯一のインスト曲「Fantasy」も素晴らしい。
10. Savages / Silence Yourself(2013)
こちらもフジでの来日目当てで購入。ルックス的にはかつてのL7を彷彿させる、硬派な4人組の女性バンド。イントロ曲の「Shut Up」や「I Am Here」からは、腰がどしんと据わったタイトなリズム隊を中心に、SE的な手法を駆使して耳をつんざく鋭利なギターが畳みかけてくる。ライヴでの瞬発力も相当なもの。ヴォーカルは若い頃のパティ・スミスに似ているけど、音はクラッシュからエコーベリーやエラスティカあたりの英国ロックを受け継いでいる感も。いまどきにしてはストイックな音楽志向だけど、次作でどこまで完成度を高められるか見どころ。
11. Skrillex / Scary Monsters and Nice Sprites(2010), Bangarang(2011)
そのスクリレックス。音楽だけ聴いているとテンション高すぎて疲れちゃうけど、ホワイトステージでのライヴを目にすれば疲れなど忘れさせてくれる超強力ドーピング剤になる。いまでしか盛り上がれない刹那感がいかにも米国的なノリ。良いか悪いか好きか嫌いかという話ではなく、2010年代に体感しておくべき音。
●過去の10ベスト
・2012年
・2011年
・2010年
・2009年
・2008年
・2007年
・2006年
・2005年
・2004年
・2003年
・(特別企画)クリスマス特集
Recent Comments