カテゴリー「音楽」の記事

January 01, 2015

(1年遅れの)My Favorite Discs 2013

2015年も明けてしまいましたが、ほぼ1年遅れの2013年の10ベスト(+1)を書きました。2014年の年初に半分くらいまで手を付けていて放置していたのを改めて聴き直して再構成。比較的新しい作品が多いのは、Last.fmやShazamとかで発掘する機会が増えたこととも無縁でないかもしれません。2014年版も時間があれば近々書きます。

1から10まではどれが気に入ったというのはなく順不同。11は次点という扱いです。

011. James Blake / Overgrown(2013)
たぶん、「ダブステップの新星」といったレッテルから判断して、音源だけを聞いていてもジェイムズ・ブレイクの真価は理解できないと思う。バカ売れした前作を受けてドロップした本作はシンガーソングライターとしての本領を遺憾なく発揮。バックトラックと執拗低音は20年くらい前に流行ったPortisheadやトリッキーあたりのトリップホップを思わせるけれど、ああいう不穏さはなくてひたすらに内省的。最近はフロアをあえて避けるような曲ばかり出すけど、いざライブになればひたすら弾けまくってくれるあたりが憎めない。

022. Perfume / LEVEL3(2013)
もう鉄板。EDM色強めた5作目。前作は歌モノ志向だったので、今後はそちらの方に行くのかとおもっていたら、初っぱなからキレッキレ。でも、西海岸EDMほどせわしなくない。アクの強い粘着ダブステップなイントロからキャッチーなボーカルセクションが入る「Spring of Life」、もろEDMな「Party Maker」、言葉遊びもたのしい「だいじょばない」、アラビア音階調(?)な「Sleeping Beauty」といった遊び心もあってビジュアル無しでもぜんぜん飽きない。

033. Machinedrum / Vapor City(2013)
真っ暗なフロアでひたすらEQの低音域を引き上げて爆音で流したい種類の音楽。のっけの「Gunshotta」からして深いリバーブで安心させておいて怒濤のブレイクビーツで圧倒してくるからのけぞった。音を起きているだけでも、タイトル通りどことなく霧に巻かれているような湿っぽさが伝わってくるあたりが不思議。この低音を全身で感じ取る機会があれば、もう虜。

044. Squarepusher / Ufabulum(2012)
出来不出来はあるけれど、コンスタントに作品を出し続けてくれるあたりが信頼できるスクエアプッシャー。今作は久しぶりにアゲまくってる、だけでなくてキャッチーさもあって聞きやすいアルバムに仕上がった。Aphex Twinのようにエキセントリックな方向に行きすぎないけれど、どこか教会音楽のような荘厳さと調和のなかに狂気をはらませている点がこの人ならでは。繊細なメロから入ってV8フェラーリの空ぶかしのような怒濤の電子音でおしまくる「Dark Steering」は映像ともども必見。

Resized_055. LAMA / Modanica(2012)
ほぼスーパーカー。「Highvision」の後継的作品。ナカコーにフルカワミキ、田渕ひさ子とAgraphの牛尾憲輔。1作目の出来が正直いまひとつだったので心配だったけど、2作目で皮がむけた。弱めのキックとスペーシーな浮遊感の電子音に絡むギターサウンドが心地よい。後発のサカナクションあたりと際だってちがうのは、頂点までアゲきらずにどこか抑制的なところ。2曲目の「White Out」とかシングルカットされた「Parallel Sign」とかが典型的。

066. Sister Crayon / Bellow(2011)
「Souls of Gold」でブレイクしたサクラメントの4人組。カーディガンズやクラウドベリー・ジャムの北欧ポップが好きだった人なら間違いなく入れ込めるはず。気怠げな女性ヴォーカルとストリングス、ライトなギターサウンドの3点セットでおしゃれ路線かと思いきや、音響派の要素も含めた楽曲はかなり凝っていて、表現豊かなテラ・ロペスのヴォーカル共々しっとりと聞かせる実力派。ライブ見たい!

077. Of Monsters and Men / My Head Is an Animal(2013)
アイルランドの5人組。ケルティックフォークの要素というと以前はポーグスやドロップキック・マーフィーズ、最近ではスキニー・リスターあたりが流行っているけど、こちらはロックの要素は控えめでアーケード・ファイアあたりにも通じる土着感がある。女性ヴォーカルはケイト・ナッシュやリリー・アレンを思い起こさせる美声で、愛くるしい男性ヴォーカルとの絡みも美しい。2曲目の「King and Lionheart」からアンセム「Mountain Sound」へのつなぎが特にしびれる。2013年のフジでは土砂降りのでかすむホワイトステージの演奏が見事にはまっていて感動的ですらあった。

Resized_088. Porter Robinson / Spitfire(2011)
1992年生まれのEDM界の新星。これもフジのレッド・マーキーで見たアーティストだけど、スクリレックスのように聞き手に息をつかせてくれないひたすら突き上げまくり絶対フロア志向EDMではなく、こちらは入りで抑えつつも肝心どころでガツンと盛り上げるタイプ。2曲目の「Unizon」やヴォーカルをフィーチャーした4曲「Vandalism」あたりが無理してない感があって好印象。

099. The xx / xx(2009)
シガー・ロスあたりに通じる音響系ポストロックユニット。1曲目のイントロ5秒を聞いた瞬間に名盤であることを確信させる出来。1曲1曲はコンパクトで、生音主体のシンプルな楽器構成にヴォーカルをきっちり聞かせるあたりがありそうでなかった組み合わせで逆に新鮮。フジでは3日目ホワイトのトリ。前々日のスクリレックス、前日のジュラシック5とはまるで正反対の“静”のステージだったけど、生で見て・聞いてみると、単に繊細で美しい音を奏でるだけの名ばかりの音響系アーティストでないことが分かるはず。ギター音色響き渡る唯一のインスト曲「Fantasy」も素晴らしい。

1010. Savages / Silence Yourself(2013)
こちらもフジでの来日目当てで購入。ルックス的にはかつてのL7を彷彿させる、硬派な4人組の女性バンド。イントロ曲の「Shut Up」や「I Am Here」からは、腰がどしんと据わったタイトなリズム隊を中心に、SE的な手法を駆使して耳をつんざく鋭利なギターが畳みかけてくる。ライヴでの瞬発力も相当なもの。ヴォーカルは若い頃のパティ・スミスに似ているけど、音はクラッシュからエコーベリーやエラスティカあたりの英国ロックを受け継いでいる感も。いまどきにしてはストイックな音楽志向だけど、次作でどこまで完成度を高められるか見どころ。

1111. Skrillex / Scary Monsters and Nice Sprites(2010), Bangarang(2011)
そのスクリレックス。音楽だけ聴いているとテンション高すぎて疲れちゃうけど、ホワイトステージでのライヴを目にすれば疲れなど忘れさせてくれる超強力ドーピング剤になる。いまでしか盛り上がれない刹那感がいかにも米国的なノリ。良いか悪いか好きか嫌いかという話ではなく、2010年代に体感しておくべき音。


●過去の10ベスト
2012年
2011年
2010年
2009年
2008年
2007年
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2003年
(特別企画)クリスマス特集


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November 30, 2013

Electraglide2013回顧

Photo去年に引き続き、エレクトラグライド2013を見てきた。

去年はステージが仕切られて同時並行でやっていたけど、今年はホールの対面で交互に演奏する方式に変更。後ろを振り返れば次の演奏が始まるので、会場中央に人が集中してしまい、フードコートに出るのもちょっと一苦労だった。

アーティストは、去年の高木正勝のような“外し”がなくて、正直メリハリに欠けた印象。でも個々のパフォーマンスはすばらしく、Factory Floor、MachinedrumにJames Blakeと、どれも強烈な個性だった。

それにしてもJames Blake。メディアが騒いでいるわりには音源聞くとピンとこないし、それでもみんなが良いというので聞いていたら耳になじんできて、ライブを見てノックアウト。そう言えば同じようなことが昔にもあったな、と思って振り返ってみると、ジャンルは違えどBeckがまさにそんな存在だったような気がする。

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June 01, 2013

なんだかかなしい

bloodthirsty butchersのライブビデオを今更ながらだけれど、昔のものから最近のものまで、いろいろ見てる。

やっぱりこのバンドの魅力は、恐ろしくタイトでソリッドなリズム隊と、ひたすら奔放で豪快な吉村さんのギター、そして危ういボーカルと豊かな詩情との絶妙のバランスなんだと思う。ニール・ヤングとソニック・ユースとダイナソー Jr.を足して3で割ったといえば分かりやすいだろうか。

初期のアングラなハードコア路線から、ちょっとだけメロディの響きと叙情性を意識し始めた『kokorono』で、彼らの持ち味が最大限に引き出されたことは疑いない。でもひたすらキレまくる『LUKEWARM WIND』も、音響重視の『yamane』も、その後のアルバムも大好きだけどね…

そんな5月の終わり(6月になっちゃったけど)にて。

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March 23, 2013

My Favorite Discs 2012

また例によって年が明けてから時間が経ってしまいましたが、2012のベストを。自分がすっかりおっさんになってきたこともあって、かなりベテラン勢も強いですが、taico clubやフジなどのフェスがらみでニューカマーもそこそこ聴いた印象。80'sのエッセンスを取り込んだエレクトロ志向は昨今の傾向ですが、ノエルのようなあんがいオーセンティックなロックもまだまだ惹かれるというのを再確認した次第。

Reeliwalks●Eli Walks『Parallel』(2012)
エイフェックス・ツインの耽美さとオウテカのカオスっぷりをミキサーにかけて2010年代エレクトロのポップさをスパイスとして効かせたのが本作。身体を突き動かすと言うよりも聞き入らせる種類の音楽なので、好き嫌いは分かれそうでもあるけれど、旋律のセンスは天下一品。脳裏にこびりつくループは中毒性に満ちている。フジのレッドマーキーで繰り広げた爆音アンビエントはとにかく圧巻だった(客はほとんどいなかったけれども…)。ひさびさに日本から「鬼才」という形容が似合うアーティストが登場した。


Reorbital●Orbital『Wonky』(2012)
Orbitalは、ミッドテンポ・4つ打ちが控えめな軽めのキック・少々おおげさなリバーブ、そして教会音楽にも通じる荘厳な電子音といった、いかにも欧州の80年代テクノの雰囲気が持ち味のユニット。最新作の本作は1曲目こそ過去の曲をなぞってはいるけど、中盤にかけておそろしくテンションが高まっていく。

ピアノの旋律を基調にした"Straight Sun"から、教会音楽のように荘厳な調べに引き込まれる“Never”をピークに、だんだんとアクの強いテクノサウンドへ変化していくというのも、明らかに計算づく。エレクトラグライドでは、彼らの毒っぷりがたっぷり堪能できる"Wonky (feat. Lady Leshurr)"が大盛り上がりだった。


Refourtet●Four Tet『Pink』(2012)
エレクトラグライドに出演ということで購入。シングルをまとめた日本向けの企画版だけれど、オリジナルに匹敵する統一感はある。のっけから執拗なまでに繰り返される音数の少ないループと、叙情性に磨きのかかったダウンビートがズシーンと耳に響く。エイフェックス・ツインのアンビエント作を意識したであろうというのは、3曲目の"Jupiter"をはじめとして随所に感じられる。ライブでは妙に攻撃的になるというギャップもなんとなく似ている。けれども、狂気に満ちているのではなく、とにかくストイック。「ここで盛り上がれば良いのに!」と思わせる展開であってもひたすらに抑制的。じらされまくる方の気分にもなってもらいたいものだ。唯一ダイナミックに展開するのは最後の"Pinnacles"で、アフロビートからトライバルなハードハウスになだれ込むさまがとてつもなく心地よい。この曲について言えば、もうちょっと尺があっても良かった。


Renathan●Nathan Fake『Drowning In a Sea of Love』(2005)
弱冠22歳でドロップした典型的インドア系エレクトロ。ほんのちょっとの刺々しさと意外性、欧州の子供向け人形劇あたり?のBGMにもなりそうなキッチュなセンスに、ときには思い切って歪みまくる音像を加えるあたりが一筋縄ではいかない彼の魅力だ。

Four TetのストイックさやOrbitalのようなクールさではなくて、陽気さの中にときおり牙をむく凶暴性にぞくっとくる。最近の作品やライブもずいぶんとミニマルで大人っぽくなったけれど、このときのような青臭いくらいのポップさ・先鋭性を取り戻してほしい。


Reqruri●くるり『坩堝の電圧』(2012)
スーパーカーやナンバーガールがとうの昔に解散してしまった今となっては、数少ない自分と同世代のバンドと言うこともあって、この15年間ほどずっと聞いてきた。言ってみれば青春とともにあった存在。でも、ここ数年はアルバムごとの振幅が大きすぎて、(大げさに言うと)もう袂を分かつべきときなんじゃないかと思い始めていた。その矢先に放った起死回生の大傑作。バンドの一体感と勢い、情熱全開のメロディ、叙情性にあふれた詞。聞き進めるほどに心揺さぶられてくるようなアルバムは久しぶり。やっぱり終盤の沈みきった"沈丁花"と"のぞみ1号"が最高に素敵。


Renoel●Noel Gallagher's High Flying Birds『Noel Gallagher's High Flying Birds』(2011)
ホリーズ〜ビートルズ〜The Whoから連綿と続く由緒正しいブリティッシュロックの系譜に燦然と輝く名盤。リアムには悪いがオアシス時代の『Moning Glory』以来の傑作と断言できる。他人に遠慮する必要がなくなって、自身の音楽趣味を全開に出しまくった結果が吉と出た。すべての曲がドラマチックな感動を与えてくれるし、伸びやかなノエル自身の歌声も心地よい。一本調子ではなく、抑揚に富んでいて聞き飽きない。アルバムのアレンジは少し仰々しく聞こえるときもあるが、バンド編成で臨んだフジのライブは最高だった。個人的には"If I Had a Gun..."がお気に入り。


Reowlcity●Owl City『Ocean Eyes』(2009)
Owl Cityはアダム・ヤングのソロプロジェクト名。フェスなどで販売されているTシャツもオウムがモチーフだったりする。メジャーデビュー作の本作は、とにかくキャッチーでドリーミーでスリークな珠玉のポップチューンが目白押し。エレクトロニカやテクノの小難しさをいっさい排除して、文字通り万人受けするポップミュージックを成立させるために電子音をいかに使いこなすかを主眼に置いてつくられたとおぼしき曲たち。ライブを聞くと歌唱力そのものは実はたいしたことないのだけど、エンターテイナーとしての力量はは確かなものがある。


Reprefuse73●Prefuse 73『Vocal Studies + Uprock Narratives』(2001)
ライブはフェスで何度か目にしたけれど、音源はまともに聞いてこなかったPrefuse 73ことスコット・ヘレン。2012年にようやく何枚かまとめてアルバムを入手。「エレクトロニカ」のジャンルでレイ・ハラカミなどとともに同列に評価されたりもしていたけど、音的には全然違う。DJ Shadowあたりを雛形にした、サンプリングとエフェクトを駆使する“聴かせ系”ヒップホップをベースに、ブレイクビーツで要所を畳みかけるあたりが2000年代の音で、ボーズ・オブ・カナダあたりにも通じる。とくに4曲目の"Smile In Your Face"から"Point to B"を経て"Five Minutes Away"に至る展開などは超絶クール。最近の洗練された作品もいいけれど、やはり才気煥発のキレっぷりをたっぷり味わうならこのアルバム。また、この作品に限らず彼の作品のアートワークはどれも素敵。


Rerhiana●Rhiana『Talk That Talk』(2011)
ビヨンセのあとにリアーナあり。つくづく米国のリスナーは幸せだ。ビルボードのチャートの上位を賑わす予定調和の歌モノテクノの中にあって、アレンジそのものは似たようなものだけど圧倒的な歌唱力と声量で圧倒する。大ヒットした"We Found Love"はあえて一番最後にもってくることで、アルバムをトータルで聴かせようというという意図と自信はわかるけれど、トータルとしてみると曲調もつながりもあまりよろしくない。けれど、個々の曲のクオリティが相当に高いのでそうした不整合をものともしない。とくに"Where Have You Been"や"We All Want Love"といった純愛ソングがすばらしい。


Regotye●Gotye『Making Mirrors』(2011)
こちらも2011年から2012年にかけて米国のチャートを席巻。とくにKimbraをフィーチャリングした"Somebody That I Used To Know "が話題に。このシングル曲を聞くにつけ、個人的には正直スティング、というか中後期ポリスのフォロワー的なイメージを抱いていた。アルバムを聞くと、たしかにポリスっぽい雰囲気をたたえてはいるけれど、ソウルフルな味付けを施したオリジナリティ性もうまいことバランスさせている印象。"Eyes Wide Open"のあとの"Smoke And Mirrors"とそれにつづく"I Feel Better"なんかはファンキーかつ叙情的なモータウン調。こういうバランス感覚は、2000年代以降のアーティストならではという感じがする。


Reua●UA『Golden Green』(2007)
手に入れたのはアルバムが出た直後だったはずだけど、その良さが分かるまでに5年もかかってしまったことがまず情けない。歌モノに回帰した本作は、デビュー直後を思わせる青っぽさと、2000年代半ばの繊細さと滋味がおそろしく高度に昇華されている。1曲めの"黄金の緑"からしてそれは実感できる。とはいえ、単に過去の焼き直しで終わらせないところが彼女のすごい所以で、いままでなかったようなロマンチックな"Paradise alley / Ginga cafe"や、"Love scene"のような新境地も垣間見せる。これらの過去と未来を見据えてつくられた曲たちを経た本作のクライマックスはまちがいなく9曲目の"Panacea"だろう。ストリングスと生ドラムと電子音、そして深いリバーブのかかったUAの声が、絹の布のような肌触りで耳元をなでる。これはライブで聞かずにはいられない。


Reurl5●JAZZANOVA『All of the things』(2008)
『In Between』では、そのファンキーさとクールっぷりで、そこらのジャズ+エレクトロ系のアーティストとの格の違いを見せつけたけれど、本作ではファンキー度をさらに高め、ほとんどがヴォーカル付きのコラボ作でまとめてきた。デビュー作のような背筋がぞくぞくするような切れ味は薄まった分、ラウンジ/モンド/ボサノヴァ色が増して大人の雰囲気がつよい。とくに、"Let Me Show Ya" や、"Lucky Girl"といったPaul Randolphとのコラボでその傾向は顕著。曲ごとのつながりもよく考えられている。休日の昼下がりにコーヒーを飲みながら大きめの音量で聞くとそうとう入れ込める。

●過去の10ベスト
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November 28, 2012

エレクトラグライド

初エレグラ。開演ちょうどくらいに行ったらいきなりの行列で、会場に入るのに何分待つことやらと心配したけど案外すんなり入場。

目当ては高木正勝、FourTet、Nathan FakeにOrbitalあたり。目当てでなかったけど、電グルも懐かしの名曲連発で良かった。高木さんは自身も語っているとおり、このラインナップから浮いていたけど、すばらしい演奏。1発目というものよかった。

今年のライブはとりあえずこれでおしまい。タイコクラブに、フジ、朝霧、そしてエレグラと、例によってフェスづいた1年だったけど今年もいろんな音楽的発見があった年でした。

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August 29, 2012

いまさらながらのフジロック2012評(1日目)

もうひと月経ってしまいましたが、覚えている範囲でのフジロック評を。まずはいつになく活動的だった初日から。

OWL CITY(Green)
 シングル『Fireflies』を1200万枚も売り切ったのだからさぞかし人気だろうと思っていたけど、グリーンステージ前はけっこうガラガラ。ついでに機材トラブルのためか、スタッフがPCとにらめっこしていてライブがスタートしない。ようやく登場したのは20分ほど押しての登場。アダム・ヤングのルックスは『Fireflies』のPVのように、爽やかな青年という風貌を想像していたけど、ひげ面にTシャツ&デニムというスプリングステーンばりのラフな出で立ち。生声は録音で聞くよりも図太く、たとえて言うならマニックスのジェームスのよう。

 セットリストは、大ヒット作『Ocean Eyes』と新作『All Things Bright and Beautiful』からまんべんなくチョイス。当初は、ライブだと他の楽器に音が負け、音程も安定しないので、ちょっとライブ向きのアーティストでないかな…という印象もあったけど、後半に行くほど声が出てきて安定してきた。それと、電子音中心のOcean Eyesよりも、ロック色の強い新作の方が断然ライブ映えする。


THA BLUE HERB(White)
 日が西に傾いて暑さも和らいできたホワイトステージに現れたイル・ボスティーノ。こうして彼らのステージを見るのはいつぶりだろうか。相変わらず、その言葉のパワーに終始圧倒されるばかり。震災のこと、原発のこと、政治のこと、音楽シーンのこと。人によっては、自分に酔ったリリックを次から次へと吐き出すだけのラッパーに見えるかも知れないが、そこらの連中とはライムの重さが違う。息苦しすぎる日本の世の中を本当に憂える人が、それの解決への糸口を探そうとし続ける魂の叫び。


U-zhaan × mabanua(Avalon)
 やたらぬるいMCを繰り出すユザーンだけど、ライブとなるとmabanuaと共にやたらタイトでトライバルなドラムンベースをくりだしまくる。この日はレイ・ハラカミの命日でもあったので、「川越ランデブー」も熱唱。故人を思うと思わず目頭も熱くなる。


THE STONE ROSES(Green)
 まさかライブを見ることができるとは思っていなかった、最たるバンド。イアンとジョンの確執は大丈夫なのだろうかと不安にも思っていたが、意外にも和気あいあい。でも演奏は年を取ったぶんだけしっかりしている。イアンのボーカルは、こちらも良い意味で予想を裏切り、音程も安定しているし声もかなり出ている。イアンの掛け合いに、はにかむジョンもほほえましい。ただ、いつもなら率先して観客にアピールするはずのマニが、ジョンに遠慮していたのか。ちょっと距離を置いていたのが印象的だった。アンコールは、定型的なブリティッシュポップスからファンキーでカオティックな勢いで押しまくる、まさにマッドチェスターを体現した名曲"I Am the Resurrection"で大円団。見ておいて良かったと、心の底から思う。


THE FIELD(Red)
 STONE ROSES終了後、ちょっとだけ休んで再び出陣。目当てはTHE FIELD。最新アルバムはこれまでに比べると、若干平板というか盛り上がりに欠けるな…と思っていたのが正直な所だったけど、今回のライブを見てその印象は一変。生ドラムとベースも登場したこともあって、クライマックスまで上り詰めるいつもFIELD節に磨きがかかった。彼らにとって1時間足らずの持ち時間は短かすぎ。


eli walks(Red)
 THE FIELDが終わると、ぞろぞろお客さんが去っていく。時計を見ればもう朝の4時を回っている。が、自分にとってのこの日のトリはeli walks。新作の『Parallels』の出来がおそろしく良く、ヘビーなドラムンベースから無条件に体を揺らすダブステップ、そしてメロディセンス生きるエレクトロニカの要素をうまいことミックスした内容。単に洗練された耳障りのいい、クロスオーバーはたくさんあるけど、彼の場合は所々にひねくれた部分というか、やたらと攻撃的な部分が前面に出るときがあって、そこらがまた魅力的。ライブは観客も少なく持ち時間がない中で、全力投球。Parallelsの曲がほとんどだったが、アンビエント色を強めるのか、それともフロア寄りにせめて行くのか、今後のリリースもすごく楽しみ。実は朝まで楽しんだのは初めてフジロックに来た2001年以来。自分もまだまだ若いっ!

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April 28, 2012

AirPlay対応アンプ

パイオニアからAirPlay対応のアンプVSA-922/VSA-822が登場。FLAC対応で822は実売4万円台という価格的は魅力的だけど、いまのAirMac Express&SONY 333ESRの組み合わせに決め手にもう一つ欠ける印象。マルチチャンネルでなく2chでいいんだけどな…

ヤフオクではハイエンドは高いけど、90年代前半に発売されていた10〜15万円くらいの中級アンプやスピーカーが10分の1以下の値段で流れていたりする。マニアでなくそこそこ良い音で聞きたい自分みたいなライト層には狙い目かも。

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April 03, 2012

My Favorite Discs 2011(いまさらながら2011年お気に入り10枚)

 すでに年が明けてから3か月が経ってしまいましたが、2011年に入手した音源のベスト10作品を挙げました。有名・無名さまざまですが、これまでに劣らずいろんな発見があった2011年。傾向としてはとくに洋楽で80年代リバイバルが顕著。邦楽は90年代生まれのポテンシャルを痛感した1年でした。2012年はどんな音楽に出会えるか、楽しみでなりません。

01jonsi●Jonsi "go"(2010)
 もはやBjorkと双璧をなすアイスランドの至宝。Sigur Rosのようなストリングス主体のオーガニックな曲はもちろん、エレクトリックでヒンヤリとしたアップテンポな曲調、あるいはピアノ弾き語りの叙情的な音とも最高の相性。歌い手としての引き出しの多さには舌を巻く。アイスランド語ではなく英語主体でキャッチーなのもいい。


02negoto●ねごと "カロン"(2011)
 前作の「Hello! "Z"」も素晴らしい作品だったけれど、完成度では本作はそれの上をいく。1曲目の表題曲のイントロからしてドキッとさせられる響き。詞の内容は青臭くないのに深く切なく絶妙の線をついてくる。キーボード/シンセ主体の音作りとギターの音色が80年代テイストをそこはなく感じさせるあたり、70年代生まれにはない感覚なのかも。ハタチそこそことは思えないバンドの一体感に、間の置き方と、クライマックスへの持って行き方。そのサウンドクオリティには驚くばかり。


03el1011●El Ten Eleven "Daytrotter Studio"(2011)
 米国のインストバンドであるけれど、いわゆる南部系ジャムバンドのような土っぽさはなく、かといってテクノ系のトライバルな感じでもない。流星のようにきらきら輝くキレ味のいいギターと弾けるドラム、ミッドテンポなベースに同じループを何度も続けながら少しずつ変化を付けていくあたり、方法論そのものは電子音楽に近い。とはいいつつもあくまでもロックバンドのダイナミズムは残されていて、楽曲それぞれにメリハリがあるから聞き飽きることがない。"Living On Credit Blues"とそれに続く"Indian Winter"はタイトルともどもすばらしい名曲。


04fortet●Four Tet "There Is Love In You"(2010)
 いわゆる“フォークトロニカ”とカテゴライズされているけれど、聞いてみるとテクノ色がかなり強い印象。バキバキなものではなく、音数も少なくどことなくスカスカでもあるんだけれど、軽めのキックと粘るベース、そしてラテンのエッセンスがみごとに調和して妙にフィジカルなサウンドに仕上がっている。聴き疲れしないクリーンなサウンドと思いきや、意外とディテールは凝っているという、全てが計算され尽くした絶妙なバランスの上に成り立っていると感じさせるあたりがすごい。レッド・マーキーのフロア全体を揺らしまくったフジのライヴはとにかく圧巻だった。


05perfume●Perfume "JPN"(2011)
 「Game」も「⊿」もたしかに名盤だとは思うけれど、自分的には彼女らの最高傑作はこの作品だと断言する。とにもかくにもアルバム全体の統一感が素晴らしく、イントロを聴いた瞬間から最後まで聞き込ませるだけの吸引力がある。白眉はやはり「レーザービーム」と「GLITTER」。全体的に落ち着くべき所と盛り上がるべき所のメリハリがあり、アルバム自体もコンパクトにまとまっているのが好印象。と書いて気づいたことだが、55分もあることに今さらながら気がついた次第。正直、30分くらいに感じていた。ここまで強力な時間圧縮効果を持つ作品も珍しい。


06battles●BATTLES "Gloss Drop"(2011)
 超傑作"Mirrored"に続く作品、しかもサウンド面での中核を担っていたメンバー(タイヨンダイ)脱退後とあって、その出来が心配された本作。そんな不安をよそにリリースされた本作だけど、その切れ味はまったく衰えてはいなかった。たしかに、"Atlas"のように万人受けるするキャッチーさポップさ、アゲアゲ感は失われたものの、楽曲構成の緻密さと深みは前作を凌ぎ、ロックのカテゴリーで括るにはあまりにもスケールが大きく荘厳。本作のジャケットやシングルカットされた"Ice Cream"のPV、そしてライヴなどを見ると思うことだが、このバンドは以前からある種のグロテスクさというかおどろおどろしさを内に秘めていた。サウンドの種類は全然違うけど、この点ではVelvet Undergroundの"White Light/White Heat"に似ているといったら褒めすぎだろうか?


07rarariot●RA RA RIOT "The Orchard"(2010)
 「ニューヨーク出身」という肩書きにありがちな東海岸的前衛サウンドではなくストリングスも電子音も巧みに使いこなしながらポップで美しいメロディを奏でる男女5人組。80年代の香り漂うキャッチーな“美メロ”が特徴のバンドではあるけれど、パワフルなベースとドラムのリズム隊がしっかりボトムを支えているので、軽薄な感じがしない。フジでのライヴパフォーマンスも想像以上にパワフルでよかった。"Too Dramatic"と"Massachusetts"が白眉だけれど、アルバム全体の流れも素晴らしい。いまから次回作&再来日が楽しみなバンド。


08mfsb●M.F.S.B. "The Love Is The Message: The Best Of Mfsb"(1995)
 TOKYO FM出版の「ALL ABOUT DISCO MUSIC」の紹介文で、「フィラデルフィア・ソウルの金字塔」という文言に惹かれて買った本作。ディスコ色が強いのかと思いきや、想像以上にオーセンティックで、ロック〜テクノに聞き慣れた耳にはじゃっかん古くさく感じるかも。とはいえ、ほとんどはいちどは耳にしたことのある曲ばかりで、ジャズとソウルの幸せな出会いを目の当たりにすることができるはず。"Something For Nothing"は3分足らずの小品ながらドラマチックな展開には感動すらおぼえる。


09m83●M83 "Saturdays = Youth"(2008)
 いわゆるマッドチェスター〜シューゲイザーフォロワーで、Dykehouseなどと並んでニュー・オーダーからマイブラ、ストーンローゼスあたりの影響をもろに感じさせるバンド。耽美に響く、いかにも欧州的なピアノとシンセサイザーのイントロからして印象的。心音のように響くドラムとリバーブを聞かせたギターが心地良い"Graveyard Girl"が最高。ライブだけでなくフロアでの盛り上がりようも考えた構成はやっぱり2010年代を見据えた音。ジャケットもすばらしい。


10nikaido●二階堂和美 "にじみ"(2011)
 冒頭から昭和歌謡を前面に打ち出した二階堂節が全開。彼女にとっては、ポップな前作「二階堂和美のアルバム」が異端な存在であったわけで、本来の居場所にもどったということなんだろう。とはいいつつも、本作のクライマックスは(昭和歌謡ではなく)ラテンの響きをもつ異色の作品"お別れの時"。これ以上ないほどに陽気なメロディなのに(PVも妙に明るい)、詞がとてつもなく悲しげというのはどういうことだ。レイ・ハラカミの逝去と重なったこともあって、図らずも2011年のレクイエム的作品となってしまった。


●過去の10ベスト
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(特別企画)クリスマス特集

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March 26, 2012

Eli Walks「Parallel」

20120326_23631iTunesで購入。このアルバム、けっしてキャッチーでなくて出だしはピンとこない。けど、中盤のFree Fall以降の流れに圧倒される。スクエアプッシャーのようにヒンヤリとしていながら、みょうに扇情的。エレクトロカというひと言では言い尽くせないアーティスト。今年のフジにも出るらしいし、いまから楽しみ。

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July 18, 2011

無題

音楽を好きになれるかどうかって、意外とヘッドフォンやスピーカーの存在は重要だと思う。

自分は全くオーディオマニアじゃないけれど、オーディオ機器に標準で付いているイヤフォンと、3000円出して買ったヘッドフォンの音の違いくらいなら分かる。音のみずみずしさと説得力は全く違う。

あてがわれたもので満足できるような生活って物足りないし、プログレッシブじゃないでしょう。

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